「事務長」と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか?
医院によっても違いますが、事務長の仕事は以下のように多岐にわたります。

【人事・労務管理】
採用、教育、シフト管理、評価
【経理・財務】
売上管理、給与計算、資金繰り、コスト管理
【マーケティング】
ホームページ、SNS、広告運用、地域への情報発信
【総務・行政対応】
各種申請、業者対応、院内環境の整備

しかし、これらは事務長の仕事の一部に過ぎません。

業務を通して、医院経営を支え、組織をより良くすること。それが、本当の役割です。
医院全体を俯瞰(ふかん)し、課題を見つけ、改善策を提案する。
院長が経営判断に集中できるよう支える。
まさに、院長の参謀です。
優秀な事務長ほど、「言われたことをやる」だけでは終わりません。
今、医院では何が起きているのか。
どこに課題があるのか。
どうすればもっと良くなるのか。
一歩先を考え、先回りして動く。
その積み重ねが院長の経営判断を支えます。
そして、院長ができないことを補い、院長が見えていない景色を見る。
それこそが、事務長だからこそ発揮できる価値です。

そのためには、デスクに座っているだけでは足りません。
受付では何が起きているのか。
診療室では何に困っているのか。
スタッフは何を感じているのか。
現場へ足を運び、自分の目で見て、自分の耳で聞く。
事務長は現場職ではありません。
だからこそ、一歩引いた視点で医院全体を見ることができます。
現場職ではないからこそ、できる立ち回りがあります。
だからこそ、感情ではなく組織全体を見ることができます。
デスクワークが多いのを重々理解した上で申し上げます。現場の声を聞くためにも、業務削減できることはしなければいけません。

悩める事務長に、いつもお聞きします。
『スタッフは、本音を話してくれていますか?』
「うちのスタッフは何も言ってくれない」そう感じることもあるでしょう。
しかし、「話してくれない」ではなく、「話せる雰囲気を作れているか」が問題です。
普段から現場へ足を運び、積極的にコミュニケーションを取る。
安心して相談できる関係があってこそ、本音が見えてきます。
付け焼き刃のように面談を行なったとしても、その効果は普段の関わりに比例します。
先述の通り、多くの事務長が、デスクワークに集中しているように感じます。
膨大な業務があるので理解はできるのですが、それではスタッフの信用は得られません。

ここまで読んで、以前の「メンタル残高」の記事と矛盾していると感じた方もいるかもしれません。
私は以前、「スタッフさんが本当に求めている対話の相手は、院長先生です。」と書きました。
この考えは今も変わりません。
事務長がどれだけスタッフさんと関係を築いても、院長とスタッフさんとの関係を代わりに築くことはできません。
では、なぜ事務長もスタッフさんと関わる必要があるのでしょうか?
それは、事務長の役割が院長の代わりになることではなく、院長とスタッフさんが直接向き合える状態をつくることだからです。
そして、院長とスタッフさんの間に認識のズレや、関係性の問題が起きていないかを客観的に見る役目もあります。

スタッフさんの本音を拾う。
背景を整理する。
必要であれば院長へ伝える。
そして、院長自身がスタッフさんと対話できるようにつなぐ。
事務長がスタッフさんの信頼を独占してはいけません。
むしろ、
「事務長がいるから、院長とスタッフさんの信頼関係が深くなる」
そんな存在であるべきだと思います。
事務長は院長の代役ではありません。
TCが歯科医師と患者さんとの「橋渡し役」だとすれば、事務長は院長とスタッフさんをつなぐ「橋渡し役」です。

ただし、だからと言って、「スタッフから信頼されること」だけを目標にしてはいけません。
スタッフさんから院長への不満を聞くこともあると思いますが、必要なのは、共感であり、同調ではありません。
気持ちを受け止めることは大切です。
共感なくして、本音は引き出せませんから。
しかし、勘違いをしている方が多いのですが、院長の悪口に同調することは違います。
「そうだったんだね。」「それは大変だったね。」
このように、気持ちに寄り添うことは大切です。
しかし、「院長が悪いよね。」「私もそう思う。」と同調してしまうと、その信頼は、「院長への信頼を削って得た信頼」になります。
気付かないうちに、「院長 VS スタッフ」という構図を助長させてしまう、これはいけません。

事務長が目指すべきなのは、自分が信頼されることではありません。
忘れてはいけないのは、事務長は医院全体の味方だということです。
院長側でもスタッフ側でもなく、医院のバランスを保つ存在です。
だからこそ、相談を受けても、感情だけで判断してはいけません。
常に、「医院全体にとって何が最善か」という視点が必要です。
スタッフから相談を受けたら、院長の考えや背景を伝える。
院長へは、スタッフの不満ではなく、困っている理由や背景を整理して伝える。
双方の言葉を翻訳し、誤解を減らし、信頼をつないでいく。
これこそが、事務長だからこそできる立ち回りです。

院長が望んでいるのは、何でも言うことを聞く人でも、スタッフに人気のある人でもありません。
一緒に医院を良くしてくれる人です。

課題を見つける。
改善案を考える。
スタッフの本音を拾う。
院長へ伝える。
時には院長へ耳の痛い話もする。
そして、決まった方針はスタッフへ
正しく伝え、組織を同じ方向へ導く。

「院長の右腕」であり、「組織の潤滑油」であり、「医院全体を俯瞰できる参謀」。
それが、院長が本当に求めている事務長ではないでしょうか。
そして、その判断基準はいつも、「医院全体にとって何が最善か」であるべきです。

いかがでしょうか。
事務長の仕事は、ただただ事務作業をこなすことではありません。
医院全体を俯瞰し、課題を見つけ、院長とスタッフをつなぎ、組織が円滑に回るよう支えることです。
そして目指すべきなのは、「私がいるからまとまっている医院」ではありません。
「私がいなくても、院長とスタッフが信頼し合える医院」をつくることです。
事務長が組織の中心になるのではなく、院長とスタッフがお互いを理解し、信頼し合える組織を育てる。それが、本来の事務長の役割だと私は考えています。
その先にあるのは、医院の成長だけではありません。組織づくりの先にいるのは、いつも患者さんです。
いつもご覧いただきありがとうございます。

↓関連記事を公式Instagramで読む↓

その他ブログ・お役立ち情報は以下