「家族相談は契約率が特に低いんです。」
こういった声をよくお聞きします。
患者さん本人以外の意思が介在するため、最も厄介なネックの一つとも言えます。
その際の関門は大きく二つ。

①本人がそもそも治療に前向きなのか
②家族反対にならないか

本人が前向きでなければそもそも「家族相談」はただの断り文句ですので、本人に内容を差すことは前提です。
その上で、カウンセリングの最後に、「一度ご家族に相談してください。」とお伝えすることは少なくありませんし、患者さんからも「家族に相談したい」と言われることも多いと思います。

実際、私自身も高額治療では、後々の家族反対を防止する上でも、ご家族への相談を必ず勧めるようにしています。
仮に契約後に家族反対された場合、患者さん自身のやる気も消えてしまい、こちらから家族に対しての説明もできず、どうしようもできないからです。
そのため事前の家族相談は必須なのですが、ここで忘れてはいけないことがあります。
それは、本人が前向きだったとしても「相談してください」という一言が、患者さんにとって非常に高いハードルになる場合があるということです。
やりたい気持ちよりも、相談することへの後ろめたさが勝ってしまうのです。
要は、家族の反対以前に、そもそも相談をしていないケースがある、ということ。
だからこそ、「相談してください」で終わってはいけません。
そこから先まで考えることが、自費カウンセリングには求められます。

私たちは医療従事者なので、「治療が必要だから相談して。」と安易に考えてしまいます。
しかし患者さんにとってはそんな簡単な話ではありません。
特に歯科では、
「歯が悪くなったのは自分のせい。」
と感じている方が非常に多くいます。
もっと歯磨きをしていれば。
もっと早く歯医者へ行っていれば。
そうした後悔を抱えている方ほど、費用以前の問題で、家族へ相談すること自体に罪悪感を持っています。

例えば、「300万円の治療費が必要です。」と伝えられたとします。
患者さんの頭の中では、
「怒られるかもしれない。」
「呆れられるかもしれない。」
「なんで放置していたの、と言われるかもしれない。」
「こんな金額無理に決まってる」
そんな不安が一気に押し寄せます。
私たちが思っている以上に、患者さんは家族の反応を気にしています。
費用だけが問題ではありません。
心理的なハードルの方が大きいケースも多いのです。
実は、このような患者さんは珍しくありません。

実際、私が対応した患者さんの中にもそういう方はいらっしゃいましたし、「自分で払うので家族には言いません」と、はっきり家族相談を拒絶されることもありました。
もちろん、ご本人だけで決断できる方であれば問題ありません。
しかし、費用的に難しいケースの方が多いでしょう。
これ、自分で費用を払えない場合は「相談もせず保険を選ぶ」ということでもあります。
だからこそ、「家族に相談してください。」だけでは不十分です。
患者さんは、「何をどう話せばいいのか。」が分からず、防衛本能だけが働きます。
伝え方が分からないから、先延ばしになる。
先延ばしになるから、治療も進まない。
実は、この流れは非常によく起こります。
家族相談で止まるケースには、単純に反対される以外にも理由があります。

まず、「家族が質問できる環境を用意している」、これを伝えるのが最も簡単です。
「ご家族もご不安だと思いますし、説明が難しくなると思いますので、よろしければ一緒にお越しください。
私から再度説明いたします。
遠慮される方もいらっしゃいますが、頼ってくださいね。」
この一言だけで、患者さんの安心感は大きく変わります。
もちろん、家族にお越しいただくこともハードルは高いです。
ですが、患者さん一人で説得しようとしなくていい。
必要であれば、医療者が直接ご家族へ説明する。
その環境があることを伝えるだけでも「いざという時頼れる」という安心感が生まれ、家族相談のハードルはぐっと下がります。

また、それ以外でも私が意識しているのは、家族に相談しやすい「材料」を渡すことです。
患者さんが家族に説明する際には、「先生からこう言われました。」と言える状態を作ることが重要です。
例えば、
・なぜこの治療が必要なのか
・今治療しないとどうなるのか
・他の選択肢との違い
・費用だけでなく将来的なメリット
こうした内容を整理して、話を聞いていなくても誰が見ても分かりやすいツール(書面など)でお渡しするのは、作成には時間も手間もかかりますが、患者さんが家族へ説明しやすくなるため、非常に効果的です。
その際、「家族に必ず伝えてほしいこと」をチェックやメモすることも重要です。
また、ここまで説明したうえで、最後に私が必ず伝えることがあります。
それは、

【誰しもが家族の健康を願うもの】

それを踏まえ、以下のように話します。
「歯は自分のせいだと考えられる方も多いですし、しかも金額も金額ですので、相談しづらくて当然です。
ここで大切なのは、『ご家族も一緒に治療について考えられるか』、です。
思ってる以上に、人は自分より家族のことを優先して考えます。
ご家族からしたら、今まさにその状況です。
まず、金額がどうこうではなく、今の状態を伝えるところからです。
そして、『治したい』旨と、『どうすればいいか』を相談しましょう。
現実的に何ができるのか。
費用もいくらまでなら可能なのか。
それを建設的に話す材料の一つとして、この治療プランはあります。
ベストは出していますが、これが全てではないので、この費用だけで治療自体を諦めることは避けていただきたいです。
金額は置いておいて、ご家族は治療をしていくこと自体に対して、何か言われると思いますか?
ちなみにこの資料でうまく話せそうでしょうか?」

→先述の家族同席を促すことも

家族相談とは、患者さん任せにすることではありません。
相談しやすい環境を作ることまでが、私たちの役割です。
書面で説明内容を整理して渡す。
ご家族の同席を提案する。
電話相談を受け付ける。
こうした工夫が、患者さんの背中を押します。
「相談してください。」だけではなく、「相談しやすくするには?」という発想が大切です。
契約率が高い医院ほど、説明が上手なのではありません。患者さんが行動しやすい環境を作ることが上手なのです。
治療の価値を伝えることも大切です。
しかし、それと同じくらい、患者さんが次の一歩を踏み出せるよう支援することも重要です。
家族相談は、患者さんにとって大きな壁です。
だからこそ、その壁を低くする工夫が、結果として治療にもつながっていきます。

いかがでしょうか。
家族への相談は、私たち医療従事者が想像する以上に勇気が必要な行動です。
少し想像してみてください。
もし、あなた自身が患者さんの立場だったら、ご家族へ治療費や治療内容を相談することは簡単にできるでしょうか。
「家族に相談してください。」という一言だけではなく、「どうすれば相談しやすくなるか。」まで考えることで、患者さんの行動は大きく変わります。
カウンセリングは、単に説明をすることではありません。
患者さんが安心して次の一歩を踏み出せる環境を作ることです。
その結果として、患者さんの安心感や満足度が高まり、契約率にもつながっていきます。
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