フルマウス症例、たくさんほしいですよね!
チャンピオンケースともなれば、学会の症例発表や雑誌掲載はもちろん、集患にも使用できるため、開業医・勤務医に関わらず欲しいと思います。
さて、このフルマウス症例ですが、たった1件でもちゃんと考えておかないと売上や時間、メンタル面にも思わぬ足枷となることがあり、複数案件の同時進行ともなれば色々と崩壊しかねません。
私はこれをフルマウス破産と勝手に呼んでいます。
勤務医が複数人いるならともかく、ドクター一人で捌くのなら計画性が必要です。
特に、これから開業される先生には知っておいていただきたいです。

<税務上の問題>
例えば何百万円という金額を契約した場合、もちろん支払い方にもよりますが、その金額が入ってくるので儲かったような気になるかもしれません。しかし!
だからと言って安心しすぎるとえらいことになってしまいます。
500万円の契約をしたと仮定します。
そしてそれを一括でお支払いされました。
気持ち的には一気に500万円も入ってウハウハかもしれませんが、まずこれ、全て計上はできません。
本来、医療の費用というのは、「行った医療行為に対して費用をいただく」のが原則です。
つまり、いただいているにも関わらずまだ終わっていない治療費は、売上として計上することができません。
これは「預かり金」という名目になり、治療が終わるたびにその分を売り上げにしていきます。
契約した初年に全ての治療が終わればいいのですが、数百万円単位のケースではなかなか難しいでしょう。
そうすると、税務上は「年内に終わった治療だけ計上」することになります。
結果的にどうなるのかと言いますと、「年間目標額の進捗具合が土壇場でズレる可能性が高い」ということです。
「今年の目標額に届いた!やったー!」からのどんでん返し、なかなかキツイです。
また、医院の規模にもよりますが、自費の割合や自費金額が高い場合、税務調査の対象になりやすいという側面があります。
先程の計上の面も含めて、自費の場合の帳簿はかなり正確につける必要があります。
銀行口座の記帳に至るまで全てチェックされますので、思われている10倍はシビアに考えられた方がいいかと思います。

<コスパ・タイパの問題>
高額なフルマウス案件は、売上という額面上の意味では申し分ありません。
しかし、その分器材も薬剤も時間も人件費もかかっています。
何より大きいのはチェアータイムですね。
すなわち、コストパフォーマンスとタイムパフォーマンスで考えると、売上に対しての利益率は実はそこまで高くありません。
もちろん赤字とは言いませんし、それなりの利益にはなっているでしょう。
しかし、長期間の治療計画にもなると、途中で治療の追加やプラン変更になることもあると思います。その場合、既に高額な治療費を支払っている患者さんに伝えづらく、医院である程度の費用を負担するケースも実際はあるのではないでしょうか?
(可能ならいただくべきですが・・・)
ポイントとして「思ったほど利益が出ていない」というのが挙げられます。
時間をかけてしっかりやったのに、かけたコスト分の回収が実感しにくいのです。

<チェアータイムの問題>
チェアータイムの話が出ましたので別の側面のお話をしますと、他の治療枠や初診枠に影響することもしばしば。フルマウスの方を優先しすぎると他のアポが入らず、他を優先するとフルマウスがキャンセルにもなりかねない・・・
簡単に言えば回らない、ということです。
チェアータイムの圧迫はかなりシビアな問題なので、フルマウスを契約する場合、どのくらいチェアータイムがとられるのか事前にしっかり考えておく必要があります。
これ以上は入金されない、でもやるべきことが山積み。他の患者さんもいるのに…
治療が終わらないと計上にはならないので実質的には違いますが、気持ち的には「ずっとタダ働き」にもなるかと思います。

<患者満足度の問題>
とても残念なお話ですが、フルマウスはこちらの負担の大きさに反比例して、患者満足度は高くありません。寧ろ低いです。
この理由は明白です。
「費用も時間もかけているのだからちゃんとやって当たり前」という意識が患者さんにはあるからです。
高級料理を食べて美味しいのは当たり前ですよね?
一流ホテルに行って最上級の接遇を受けるのは当たり前ですよね?
そう、患者さんはこちらに「ちゃんとやって当たり前」を求めています。
つまり、その当たり前を超える結果がないと満足度は上がらないのです。
もちろん結果だけではありません。
長期間の治療になるわけですから、経過こそが大切です。
こちらは患者さんのことを本当に想って提案し、夜遅くまで治療計画を立て、時には時間をオーバーしながら治療を頑張っていますが、それは患者さんからしたら当たり前なのです。しんどいですよね。
そういう意味では、性格的にフルマウスが向かない患者さんも実際にいます。
その見極めはとても大切だと思います。そういう人は平気でキャンセルします。
誰でも彼でも受けてしまうと、治療するドクターはもちろん、対応するスタッフさんも疲弊してしまいますので注意が必要です。

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