矯正治療のカウンセリングで、いきなり治療方法や費用の説明をしていませんか?
矯正は、数ある治療の中でも特にドクターショッピング(複数の医院の受診)が多い治療です。
来院された患者さんは、すでに他院で説明を受けていることも多く、ある程度の知識を持っている場合があります。
だからこそ、同じような説明を繰り返すだけでは、他院との違いが伝わりません。
私が必ず確認するのは、患者さんの「優先順位」です。
何を一番大切にして治療を選びたいのか。
これを確認することが、カウンセリングの出発点になります。

矯正治療を検討する患者さんが、全員同じことを求めているわけではありません。
例えば、優先順位の項目には次のようなものがあります。

①できるだけ費用を抑えたい。
②とにかく綺麗にしたい。
③装置は絶対にマウスピースが良い。
④とにかく早く終わらせたい。
⑤絶対に抜歯はしたくない。

もちろん、すべてを希望する方もいらっしゃいます。
しかし、希望する条件がすべて両立するとは限りません。
だからこそ、何を最も優先したいのかを確認する必要があります。

患者さんに優先順位を確認しても、「全部大切です」と仰ることがあります。
そんな時、私は紙に項目を書き出し、点数をつけたり、どちらが譲れないかに丸をつけていただくこともあります。
分かりやすいのは、費用・仕上がり・装置・期間・抜歯可否の5項目です。

「矯正治療を選ぶうえで、何を一番大切にしたいとお考えでしょうか?」
「それぞれの重要度を10点満点でつけていただけますか?」
「もし費用と仕上がりのどちらかを優先するとしたら、どちらが譲れないでしょうか?」

患者さん自身に選んでいただくことで、言葉だけでは見えなかった本音や判断基準が明確になります。

例えば、費用が10点、仕上がりも10点だったとします。
ここで「両方大切なんですね」と終わらせてしまっては、せっかく点数をつけていただいた意味がありません。

「両方とも10点ですね。では、仮に費用を抑えることで治療の選択肢が限られるとしたらどちらを優先されますか?」
「反対に、希望する仕上がりに近づけるために費用が上がる場合は、どこまでなら検討できそうでしょうか?」

大切なのは、点数そのものではありません。
なぜその点数をつけたのか。
その理由を深掘りすることで、患者さん自身も気づいていなかった価値観が見えてきます。

<できるだけ安くしたい>
同じ治療なら安くしたいのは当然の心理ですが、費用を優先することと、単純に安い治療を選ぶことは別の話です。
私はさらに予算もお聞きしています。例えば、同じ「費用重視」でも、50万円以内で考えている方と100万円では、提案できる選択肢も変わります。
大切なのは、単純に安さを求めているのか、予算内で納得できる治療を求めているのか。その違いを確認することです。

「費用は大切ですよね。ちなみに、どれくらいのご予算でお考えでしょうか?」
「仮に費用を抑えて治療を始めたとしても、希望する仕上がりにならず、再び矯正治療が必要になれば、結果的に負担が大きくなる可能性もあります。」
「ですので、金額だけではなく、どこまで治療できるのかも比較していただきたいです。」

例えば、他院より20万円安い治療があったとします。
当然、患者さんにとっては魅力的です。
しかし、その金額に何が含まれているのか、治療のゴールがどこに設定されているのかによって、比較の意味は変わります。
追加費用、保定装置、治療後の管理なども確認が必要です。
もちろん、安いから治療の質が低いというわけではありません。
治療方法や適応症例が異なる場合は、金額だけで単純に比較することはできませんので、大切なのは、同じ条件で比較できているかどうかです。
価格差の理由を整理し、患者さんが納得して選択できるようにすることが重要です。

いかがでしょうか。
矯正治療のカウンセリングで大切なのは、こちらが勧めたい治療を選んでいただくことではありません。
まずは患者さんが何を大切にしているのかを理解することです。
費用、仕上がり、装置、期間、抜歯。
優先順位を確認し、点数をつけていただき、その理由を深掘りする。
患者さんの希望を聞くだけでなく、判断基準を一緒に整理することが重要です。
後編では、その他の優先事項、確認した優先順位を実際の治療提案にどうつなげるのか、契約につながった事例も交えてご紹介します。

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