「丁寧に説明する」と「長く話す」は違う
カウンセリングを聞いていると、
「説明が足りなかったらどうしよう。」
「ちゃんと全部伝えなければ。」
「誤解されたくない。」
という気持ちから、とにかくたくさん話してしまう人がいます。
もちろん、説明すること自体は大切です。
ただ、ここで考えてほしいのが、「たくさん話した=伝わったではない」、ということです。
むしろ説明を増やせば増やすほど、本当に重要な情報がその他の情報に埋もれてしまうことがあります。
患者さんに必要なのは、情報量の多さではありません。
「自分にとって何が重要なのか」が理解できること。
丁寧さと長さを混同してはいけません。
話が長い人は「全部説明しよう」とする
例えばインプラントの説明をするとします。
インプラントとは何か。
構造はどうなっているのか。
手術はどうするのか。
骨造成とは何か。
治療期間はどのくらいか。
メーカーは何を使っているのか。
保証はどうなっているのか。
もちろん、どれも必要になる可能性のある情報です。
ただし、「必要になる可能性がある情報」と「今、必要な情報」は違います。
患者さんが最も気にしていることが、「手術が怖い」なのであれば、まず話すべきなのはそこです。
全部説明してから質問を受けるのではなく、必要な情報を必要なタイミングで渡す。
この感覚が非常に重要です。
「まとめる」より「区切る」
話を短くしようとすると、「では、要点をまとめて話そう!」と考えがちです。
しかし、カウンセリングでは無理に一つの話としてまとめる必要はありません。
むしろ、短く話して、一度止める。
これだけでも会話は大きく変わります。
例えば、「今の状態なら、私はインプラントが第一選択だと思います。」
ここで一度止める。患者さんの反応を見る。
そして、「なぜなら・・・」と次へ進む。
一気に説明するのではなく、
話す→止める→反応を見る→次へ進む
カウンセリングはただのプレゼンで終わってはいけません。
必要なのはキャッチボールです。
90秒を目安に、一度返す
カウンセリングで特に注意したいのは、TCやドクターが何分間も一人で話し続ける状態です。
説明している側は気持ちよく話せていても、患者さんは途中から聞くだけになっています。
それではカウンセリングというより講義です。
一つしっかり説明したら、頭の整理のために小休止を入れます。
「ここまで大丈夫ですか?」
「どう感じますか?」
「ちなみに一番気になっているのはどこですか?」
と患者さんへ返す。もしくは止める。
目安として、長くても90秒程度話したら一度区切るくらいでも良いと思います。(この辺りは私の肌感覚です)
話す技術だけではなく、話を終わらせる技術を持つ。
これだけでも患者さんのカウンセリングへの参加度は大きく変わります。
うまい人ほど随所に「質問」を取り入れる
カウンセリングが上手な人を観察すると、自分の説明だけで会話を完結させません。
例えば、「インプラントなら隣の歯を削らずに治療できます。」で終わるのではなく、「ちなみに、ご自身では入れ歯とインプラント、どちらをイメージされていましたか?」と返す。
すると患者さんが話し始めます。
そこで初めて、「実は入れ歯は嫌で……。」という本音が出てくるかもしれません。
説明→質問→患者さんが話す
この循環をつくることが重要です。
話を短くすると、こちらの説明が減るだけではありません。
患者さんが話せる時間が増えます。
患者さんが話す、即ち頭の中の言語化ができるということ。
これが「自分はどうしたいのか」を考えてもらうきっかけになります。
「沈黙」を怖がらない
話が長くなる人を見ていると、沈黙を埋めようとする傾向があります。
説明したあと患者さんが黙る。
すると不安になって、
「ちなみに……」
「あともう一つ……」
「それから……」
と説明を追加してしまう。
しかし、その沈黙は患者さんが考えている時間かもしれません。
100万円、200万円を超える治療の説明を聞いて、その場ですぐ言葉が出てこないのは当然です。
だからこそ、話したら待つ。
これも立派なカウンセリング技術です。
沈黙を怖がって説明を追加するほど、患者さんが考える時間を奪ってしまうことがあります。
短く話すには「相手」を見なければならない
話を短くするというと、「説明を省略すること」だと思われるかもしれません。
私は少し違うと思っています。
重要なのは、相手に合わせて情報量を変えること。
詳しく知りたい患者さんには詳しく説明する。
概要だけ知りたい患者さんには簡潔に伝える。
不安が強い患者さんには、その不安に関係する説明を厚くする。
年齢によっても、情報の処理能力は違います。
全員に同じ説明をする必要はありません。
だから短く話すためには、「何を話すか」より「相手は何を知りたいのか」を見る必要があります。
短く話す技術は、相手を見る技術でもあります。
カウンセリングは「説明力」だけではない
カウンセリングが苦手だと、「もっと説明が上手くならなければ」と思う人は多いです。
しかし実際には、説明力だけを磨けば良いわけではありません。
必要なのは、
話す力・聞く力・質問する力・待つ力・区切る力
このバランスです。
どれだけ素晴らしい説明ができても、患者さんが話す余白がなければ本音は拾えません。
そして、本音が分からないままでは、その人に本当に必要な提案もできません。
カウンセリングは「うまく話す競技」ではない、ここを勘違いしないことです。
いかがでしょうか。
カウンセリングが上手くなりたいと思うと、多くの人は「何を話すか」を増やそうとします。
トークスクリプトを覚える。知識を増やす。説明方法を増やす。
もちろん、それも必要です。
ただ、ある程度話せるようになった人ほど、次に必要なのは逆かもしれません。
何を話さないか。どこで止めるか。いつ患者さんに返すか。
自分が話す時間を減らせば、その分だけ患者さんが話す時間が増えます。
そして患者さんが話してくれれば、本当に困っていること、不安に思っていること、大切にしていることが見えてきます。
こちらが話すことより、患者さんに話してもらうこと。カウンセリングでは、こちらの方がはるかに重要だと思っています。
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